優しい爪先立ちのしかた
不良少年であったし社会の汚いところを歩いたこともある梢だったが、そんな経験を女子高生がしたのかと思うと鳥肌が立った。
血が出ている。
尾形から血が。
傷口の向こうに見えないはずの肉が見えた気がして、栄生は胃に入ったものが出そうになった。
「………なさん、……んに、でんわを」
でんわ、だけ聞き取れた栄生はガタガタと震える手で携帯を握った。
「きゅ、きゅうきゅうしゃ……」
「嶺さんに、電話してください」
傷口を押さえる手が真っ赤なのが見える。
尾形が顔を歪めながら言うのに従って、栄生は嶺に電話をした。
尾形が刺されたことを伝えると、すぐに車が来た。救急車ではないけれど、それが助けてくれることは本能で感じる。