優しい爪先立ちのしかた
「ど、うしたの?」
顔を洗って制服を着終えた栄生は、朝ご飯を用意している梢を見て驚いた。
「小説に熱中していたら朝になってました」
「梢、本なんか読むの?」
「漫画でした、間違えました」
えええ? と心配した顔をする栄生。
目玉焼きを食べた後、ずっと梢の様子を窺って家を出る。
それを見送ってから、洗濯を始めた。
皿洗いをして、家の掃除をする。栄生と本の部屋は手をつけずに、視線を庭へやった。
夕飯の買い出しをして、午後になる。
空腹よりも眠気が勝った。
「あれ、推薦は……?」
カナンの戸惑った声がした。
図書館で勉強する栄生の手が止まる。
「やめちゃった」
大きく見開かれる目。