優しい爪先立ちのしかた
それを聞いて、栄生は思い返す。
カナンに家のことをきちんと話したことはない。尾形のことも、母親のことも。
そう考えると、そういう気もする。
「カナンは私の親友だから」
栄生が微笑むと、その周りに花が咲く。カナンはそれを出会った頃から肌で感じていた。
栄生が、はなという名前であることに深く納得していた。
「栄生ちゃんも、あたしの親友だよ」
カナンの声の後、浅い溜息。
「お前等、恥ずかしくないの?」
最初からか、いつの間にか居たのか、カナンの隣に比須賀が言った。
家に帰ると、家の中が真っ暗だった。
その闇に足を踏み入れることを躊躇う。
栄生は後退りして、庭に回る。