優しい爪先立ちのしかた
見られている。
「わかった、寝てたんだ」
「え」
「頬に畳の痕ついてる」
ふふ、と笑いながら栄生は梢に近付いた。
見破られてしまった梢は、口を噤む。
ほら、と頬を指差してみれば、その手を掴まれた。
簡単に唇を重ねられ、栄生が目をパチクリとさせる。梢が首を傾げるのと同時に、「もういっかい」と口から零れた。
熱い口付けを重ねた後、ここが台所であったことに気付いて笑った。
「今日は薫る家に行こ?」
「はい。すぐに雨戸を閉めてきます」
先程のお返しというように梢が栄生の頬を撫でる。
その頬を膨らませて栄生は着替えに、自分の部屋へ行った。
薫る家に行って帰る中、何方ともなく手を繋いで歩く。