優しい爪先立ちのしかた

咄嗟に栄生の頭の中で、よくある宇宙人の姿が出てくる。いやまさか、宇宙人に囲まれるだなんて。あの円盤に連れ去られるだなんて。

そんなことは思いもしない梢は、売られた喧嘩は買うもんだといわんばかりに見えない相手へ喧嘩を始めた。

「ちょ、ちょ……」

置いていかれたのは完全に栄生の方だ。

金属が擦れ合う音。月が雲から出る瞬間、月光に反射した銀色。

梢にふりかかるそれから連想したものは、銀髪。

全く栄生を襲ってこないことを見ると、金目当てでも強姦目当てでもない。
梢は昔悪い仲間と付き合っていたと聞いたけれど、沙恵さんの様子から憎まれていたわけではないように思えた。

だったら、何が目的で?




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