優しい爪先立ちのしかた
生の色がない。
「平気ですよ。お兄さん、お仕事は?」
「もう深夜だ。今日なんか食べたのか?」
視線を逸らして、考える。考えるが答えが出ないということは、答えは明確。
溜息を吐いて、コンビニ袋に入っていたおにぎりを差し出した。
首を振る栄生の項は白く、嶺は眉を顰める。
「高校は?」
「自由登校です。試験は、ちゃんと受けに行きます」
項垂れた視線の先は埃一つ落ちていない白い床。
看護師が心配して持ってきてくれたブランケットが膝に掛かっていた。いつまでここにいる気なのだろうか。
栄生にはそう言うが、嶺も会社が終わって毎日この病院まで車を飛ばしてくる。それは容易ではないはずだ。