優しい爪先立ちのしかた
遠縁の病院ということで追い出さないでもらってはいるが、病院は健康な人が泊まる施設ではない。
「梢、ちゃんと起きますよね?」
見上げた瞳の奥が、不安で揺れていた。
それに大人として何と答えるべきなのか、考える。
「あ、ううん」
急に微笑む顔に、どきりとする。栄生は薄い唇で続けた。
「別に、良いんです。目が覚めなくても、別に」
「何?」
「だって、私と約束したから。来世でまた逢えるんです」
嶺は何も言えなかった。
来世、ということは、現世の次ということ。
現世ではなく、二人が来世で逢う為には、二人が死なないとならない。
梢だけではない、栄生もだ。
半分だけ血の繋がった妹の思考回路が分からない。
分からないだけではなかった。
狂気を感じる。