優しい爪先立ちのしかた
それは、呉葉のものに似ている気がした。
「そんなこと言うな」
自販機でカフェオレを買った嶺は、栄生の隣に座る。それから温かいカフェオレをブランケットの上に乗せた。
「栄生に未練がなくても、周りの奴等は未練ありまくりだろ」
栄生が缶を両手で覆う。決して冷たくはなかったが、手が温かくなるのを感じる。
空調の音が大きく聞こえた。
「それに、俺は好きだ」
「……何がですか?」
「こんな風にグニャグニャ曲がりながらも、ちゃんとした道を辿ってきたお前が」
軽やかに笑った声が響く。病院の待合室には似合わない音だと思った。
きょとんと嶺を見る栄生は、ただの女子高生。それで良い。
「諦めんな」