優しい爪先立ちのしかた
大人は決めつける。子供は無力だ。太陽は嘲笑うように昇ってくる。
負の感情を持つ人間の方が馬鹿を見る世界だと思う。
「諦めるのは簡単だって言うけど、そんなのは本気で諦めたことのない奴等だ。諦めるのは辛いし苦しい。しがみついていた感情をまるごと捨てるのと同じことだ」
人間の記憶は、物質のゴミのようにポイとゴミ箱へ捨てて、知らない所で燃やされることはない。
「梢が好きなら、どんなに振り回されて疲れてもしがみついてやれよ。お前は頭が良いからわかるだろ、来世じゃない。今だ」
缶を覆う手が震えた。
涙はなかった。
「まさか、お兄さんに説教されるとは……」
「……やめてくれ、今更恥ずかしくなってきた」