優しい爪先立ちのしかた
ふざけて言っているつもりは無かったが、笑ってしまう。
「場所変えよう」
二人が来たのは、いつしかキウイタルトを食べた喫茶店。
家の事情を一通り話した後、木苺タルトを口に運ぶ栄生。カナンは黙って何かを考えていた。
考えるだけ無駄なことも分かっていたが。
「それで、栄生ちゃんの中では襲った人達が誰か分かってるの?」
「私は、呉葉さんが動かした人達だと思ってる」
少しだけカナンの表情が歪んだ。栄生の意見に否定出来る程の想像力も情報量もない。
栄生の口にカスタードの甘さが広がる。
美味しい。でも、皿に零れた木苺の汁が血に見えてならない。
梢を刺した人間を追いかけようと思った。きっと膝は笑っていただろうけれど。