優しい爪先立ちのしかた

いや、当たり前のことだ。

呉葉が可笑しいのだ。自分の子供に他人に向けるような嫉妬の目を向けるなんて。

その為に、記憶を消すなんて。

「怖い……」

素直な感想が口から漏れた。栄生はそれに返事はしなかったが、否定もしない。

可笑しいと言われないだけ、マシだ。

「カナン」

フォークを置いて、栄生が微笑む。

「私と友達になってくれて、ありがとうね。この前もこんな話したっけ、比須賀に妨害されだけど」

「図書室の?」

「そうそう。あんなにツンツンしてた私と話してくれる器を持ってるのは、カナンだけだったね」

懐かしむように目を細めた。
窓の外は日が傾いている。



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