優しい爪先立ちのしかた

そんな風に昔の話をしないで欲しいと思った。

「栄生ちゃん、人付き合いテキトーだったし。都会っ子みたいな空気で、浮いてたから」

「ちょっと、私の良い所は?」

「でも、栄生ちゃんは空気を変える力を持ってる」

だから惹かれた。
だから心配だった。

でも、カナンが屈託のない笑顔を見せる度、栄生がどれだけ救われたのか知らないだろう。

「ギャップ萌え?」

「ちょっと違うような」

「えー」

不満そうな声を出した栄生。それを見て、カナンが笑った。







病院に行くと、銀髪が見えた。

珍しく洋装。いつもはだらしなく白い男物の着物を着ているのに。

それでも、胸元のマリア様は健在。



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