優しい爪先立ちのしかた

何ともあっさりとした返し。

「死ぬ時は死ぬ。生きてるなら万々歳だろ、運が良かったって喜べよ」

腕を離す。聖は肩を回して、「で、病室は?」と聞いた。

もう目覚めても良いんですけどね、と医師は言ったが、梢は目を覚まさなかった。

ベッドの一番傍の椅子に栄生が座る。窓の近くに腰掛けた聖は、本題を忘れたように目を閉じた。

栄生は梢の手を一度握って、シーツの中に戻した。

目を瞑った聖は、画の中にいる人物の様。

「お前の思ってた通りだ」

色素の薄い睫毛が動く。栄生を向いた視線が、静かに鋭くなる。

裏社会に関わる家系なだけある。


「氷室呉葉は、組の下っ端を使って壱ヶ谷梢を襲わせた」


栄生は浅く頷いた。



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