優しい爪先立ちのしかた
その指先を見ながら聞く。その答えに疑問を持つことは無かったが、気付くことはあった。
「栄生さんはどこですか?」
視線を男児に戻せば、先程見たよりも成長していた。
少年、といったところか。
「知らない」
「……ですよね。髪がここらへんまであって、鼻が高い顔をした女性なんですけど」
「お姉ちゃんがどこに居るのかは知らない」
「お姉ちゃん……?」
足元を見る。梢は裸足だった。
そして、彼も。
「お姉ちゃんは泣かないから、悲しまないって思われてる」
もうすっかり、高校生ほどの背丈。
梢は驚きながら、彼と手を繋いでいた。
彼の正体を考える。そして、栄生の泣き顔を記憶から探った。