優しい爪先立ちのしかた
何処へ行ってくるのか分からない。試験なのか卒業式なのか。
あの子に行ってらっしゃいと誰かが言ってあげなければ。
夜の闇も怖がってしまう、子供の栄生に。
向かおうと歩き出す梢の手を止めるのは彼。振り向いて解こうとすると、両手で制された。
「すみません、行かないと」
「ここは僕の居場所なんだ」
「栄生さんに呼ばれてるんで」
「でも、梢さんの場所じゃないんだね」
悲しそうな目。栄生に似た顔で、そんな表情をされると参ってしまう。
梢は彼に向き合う。
「栄生さんを守らないといけないので、俺は行きます。あの人は暴走すると危ない所があるので」
彼が笑う。
「うん。お姉ちゃんをよろしくね」