優しい爪先立ちのしかた
あなたの足首
梅雨前の陽気に、微睡みながら栄生は本を読み込んでいた。時折落ちる首を前にしながら梢は雑草が伸びてきたな…と庭先を見る。
梢を座椅子代わりに使うのは今や栄生のマイブームになりつつあった。
ついに栄生の頭が梢の鎖骨に当たった。眠っていても尚、本だけは落とさない。
今回の中身もフランス語だった。流石に読めないな、と思いながら静かにそれを手から抜く。
ベッドに運ぼうか、畳に転がして毛布を掛けようか考えた。考えたところで、
「…え、なに」
玄関のベルが鳴った。建物は古い屋敷だが、セキュリティーはきちんとしている。
休日に客人とは珍しい。栄生が立ち上がったのを見て、梢も立ち上がった。