優しい爪先立ちのしかた
梢が出ると、ジャージ姿の女子高生が居た。
きょとんとした顔を見せてから、すぐに納得したように、あー、と呟く。
「あなたが、ゴールデンレトリバー」
「…は?」
「あ、栄生ちゃんの友人の深山カナンと言います。ちなみに実家は商店街で深山コロッケ屋を営んでおります」
どうもご丁寧に宣伝まで。梢はトコトコとゆっくり歩いてきた栄生の方を向いた。
「カナン、どうしたの?」
「お昼ご飯食べよーって来てみたんだけど。だめ?」
肩にかかるはスポーツバッグ。手に持つは深山コロッケと書かれた袋と、めんつゆと素麺が入ったスーパーの袋。
「もちろん」
主人の一言で、今日の昼食は決まった。