優しい爪先立ちのしかた
流石栄生の犬、とその手慣れた手つきを見て思ったカナン。先程は無意識にゴールデンレトリバーなどと口走ってしまったが、一応常識は弁えている。
言わずとも、錦糸卵を作った後、梢は胡瓜を切り始めた。
「栄生さんは、学校でもあんな感じですか?」
あんな感じとは、と梢の視線の先には見えないが居間にいる栄生。
「普通ですよ。ここでは家主だから、遊びにくるといつもあんなだけど」
「仲良いんですね」
「中学から一緒だし。ここって田舎だから、仲良くせざるをえないってゆーか。喧嘩も結構くだらないことでしましたけど」
あはは、と思い出したのか笑うカナン。
友達と喧嘩、何故かそれは容易に想像できた。スイッチが入ると、栄生は際限なく怒りを露わにしそうだ。
「何回も殴られました」
やはり。