優しい爪先立ちのしかた

居間で待っていた栄生はテレビを見ていた。台所からする音が消えて、二人がお盆を持って現れた。

「お待たせ。素麺にコロッケだけど」

「わーい、いただきます」

パチンと手をあわせてから、箸を取り、深山コロッケを食べ始める。それを見てから、梢とカナンも食べ始めた。

梢がコロッケを食べたのを見て、「ね、美味しいでしょう」と得意気に笑うのは栄生。そんな姿を見て笑うのはカナン。

確かに深山コロッケは絶品だった。今度から惣菜が足りない時は買わせてもらおう、と密かに決める。

「部活、今日は午前練だったの?」

「うん。帰ってもみんな忙しそうだったから、栄生ちゃんは暇してるだろうなって」

いつも暇してるわけではないが、部活三昧の彼女に比べれば暇なのかもしれない。



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