優しい爪先立ちのしかた
ね? と無言の圧力。
勿論、と梢は肩を竦めた。
「カナンはね、私がここに初めて来たときから、結構心配してくれたの」
「面倒見の良さそうな方でしたね」
「そうそう、妹とお兄ちゃんが居て。私にここに居て良いよって言ってくれたの」
皿を出す栄生。梢は火を消して、皿を受け取った。
それに生姜焼きを移す。
「身内は兎も角、外の人を裏切るようなことはしたくない」
嘲笑するように、微笑む。
梢は菜箸を置いて、栄生の方に手を伸ばした。頭というより、額に手を乗せる。
「優しいですね」
驚いたように栄生が皿を持つ手を危うく滑らせそうになった。
少し紅らめた顔を梢から背ける。
「何なのその上から目線。むかつく」