優しい爪先立ちのしかた
ぼーっとしている栄生の視界に梢の姿が入った。
手を左右に振るが、栄生は梢の顔を捉えたまま視線は動かなかった。
「どうしたの?」
「いえ、ページが進まないので、どうしたものかと思いまして」
「澪標ってどういう意味なのかって考えてたの」
ミオツクシ、と頭の中で変換される。梢は辞書を持ってこようか、と考えたが栄生がこちらを向いたままだったので動かなかった。
「ねえ、どうしてずっとそこに居るの?」
「急に雨が降ってきたら洗濯物を取り込まないといけないので」
「洗濯物は向こうでしょう」
「雨はここからでも分かるので」
縁側に並ぶ二人。栄生は本に栞を挟んで膝の上に置いた。
梢はそれを見て、庭を見つめる。