優しい爪先立ちのしかた

その後ろ姿を見つめて、梢は腕を下して雨を見上げる。

あ、洗濯物。

思い出して、洗濯物の干してある庭の方まで行った。

それすべてを取り込んで、少々水分を含んだタオルからは柔軟剤の香りがする。梢の腕についていた腕時計の金具が外れた。

籠の中のタオルの上に落ちる。

新しいものではないが、どうしてこのタイミングで落ちるのだろうか。

ドキリ、と嫌な心臓の動き方をした。腕時計を掴んで、顔を上げる。

そして、舌打ちした。



だるく重たい身体を引き摺るように曇った空を縁側から見つめて、居間まで歩いていく。

「おはよう」

「おはようございます」

いただきまーす、と半分眠ったような声が梢の居る台所にまで届く。

居間に戻ると、お粥を掬ったレンゲを咥えてやはり半分眠ったようになっている栄生の姿がある。



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