優しい爪先立ちのしかた

栄生さん、と呼ぶと目をこじ開けて梢の方を見る。レンゲが口から離れた。

「ご馳走様」

「もういいんですか」

「あんまりお腹空いてない」

「体調優れないんですか、今日学校、」

「大丈夫だから。ちゃんと行く」

なんたって栄生は高校では今のところ皆勤だ。三年になった今、大学に進むにあたって、もし推薦を貰うのなら有利に違いない。

食卓の向こう側から梢が手を伸ばす。

それに気づいた栄生は、先程の眠そうな態度からは考えられもしないようなスピードで避けた。

「、なに?」

警戒したような口調で尋ねた。少なからず梢も傷つき、この前といい今日といい何なのだとこちらが聞きたい気分だった。

「熱があるのかと思いまして」

「ないって言ってるでしょう」

栄生は立ち上がり、居間から出ていく。



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