優しい爪先立ちのしかた
つっかれたー、と机の上にへばったカナン。椅子を横に向けて、窓に体も凭れかけた栄生が「おつかれー」と気持ちのこもっていない声をかけた。
「うわあ、疲れがこもってる声」
カナンは一限目の教科書を出して、頬杖をつく。わくわくとした顔で聞く。
「なになに? あの先輩逃げちゃったとか? 梢さんと仲良くしてるとか?」
「逃げてないし、梢が朝から触ろうとしてきて面倒くさいだけ」
疲れは吹っ飛んだらしいカナン。
逃げてないのか…ちっ。と心の中で思ったカナンは、そういえば梢に伝えていなかったと思い出す。
「梢さんと喧嘩したの?」
「喧嘩っていうか、なんかダメなの。やっぱり梅雨の間は。梢の首筋見てると引っ掻いてやりたくなるってゆーか」
「その梅雨だけ発情期はなんなの?」
栄生は怪訝な顔をする。