優しい爪先立ちのしかた


プールの授業は選択だ。夏ということもあり、選択する生徒も少なくはない。

栄生はそんなかったるいことは御免だったが、市民プールが無いこの街に住む運動大好きなカナンにとっては丁度良い。

マット運動が早めに終わったので、栄生はカナンの様子を見に来た。

「三年間もプールに入れるなんて幸せ!」

やはり女子は少ない中、カナンの大きい声が聞こえる。

うわあ、と思いながら苦笑い。カナンがプールから上がってくるのが見えて、大きく手を振る。

「良かったね、三年間もプール入れて」

「あ、聞こえてた?」

あはは、と陽気に笑いながらタオルを羽織ってからカナンは更衣室へ行った。

栄生は先に教室に戻ったようで、更衣室から出ると姿は見えなかった。その代わりといっても難だが、日陰の下で休んでいた比須賀が居た。

カナンと目が合う。



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