優しい爪先立ちのしかた
比須賀とカナンは幼馴染にも等しく、腐れ縁にも等しい。
神様のなんの悪戯心が働いたのかは分からないが、幼稚園からずっと同じ学校。
「…プールもやらないの?」
そして、比須賀はこの前サッカーをしていなかった男子。体格は悪い方ではないが、少しだけ重心が左に傾いている。
カナンの言葉に少し視線を下げる。それから、幼い子供のように笑った。
「いやあ、着替えんの面倒だしさあ」
体育の時だからか、無理して明るく言っているようにしか見えない。
そんなのも、偏見か。
「まあ、それもそっか」
「水泳楽しい?」
その質問を彼にされるのは、少し躊躇う。
まだ水分を含んでいるカナンの髪から雫が落ちた。比須賀は動かない。
「うん、楽しい」
正直にそう答える外になかった。