優しい爪先立ちのしかた
「嫌いって言われた。先生に」
「ああ、教師は正規の道から外れた生徒を遠ざけたいだけなんですよ」
多分『教師』という存在とは良い思い出は無いのであろう梢は、落ち着かないように襟足を触った。
今日起こった事件。株のこと。
ニュースが流れていく。
「私は先生の高校生の頃と似てるんだって、だから嫌いみたい。それって、昔の自分が嫌いってこと?」
「そうかもしれないですね」
「梢は、昔の自分って好き?」
栄生は振り返って、梢の目を見た。踏み込んでいるのは分かっている。それでも知りたい。
そうでなければ、何も前に進まない気がした。
「嫌いですね。栄生さんに会うまでの自分は」
そんな最近の自分も嫌いなのか。
少し驚きながら、栄生は思う。