幻桜記妖姫奧乃伝ー花降る里で君と
薄闇の中、雪政が華澄を、希皿が聖を背負い、屋敷へと戻る。
二人の意識が戻らないことを不安がる礼太に、雪政が微笑む。
「だいじょーぶ、二人とも疲れて眠ってるだけだよ。力を使いすぎたんだね。…………
こんな小さな身体に強大な魔力は負担が大きすぎる」
付け足すように囁かれた声は、礼太の耳にまで届かなかった。
二人をベッドに寝かせた後、慈薇鬼の退魔師たちは、部屋を出て行った。
「なんかあったら言え」
ぶっきらぼうな言葉に礼太がうなづくと、希皿は微かに笑った。
「華澄ちゃんと聖くんが心配だろうけど、君も眠った方がいい。自分が思ってるより、疲れてるはずだよ」
雪政の言葉にはうなづいたが、やはり眠れない。
妹と弟の顔から髪を払ってやったり、タオルケットを掛け直してやったり、何かをしていなければ落ち着かない。
しかしどうやら、雪政の言うとおりだったらしい。
いつの間にやら、聖が眠るベッドの端に顔を伏せて、うとうとしていた。
不意に頬をつつかれて、礼太はハッと顔をあげた。
見上げると、せいぜい小学校低学年くらいの男の子がにこにこと笑っている。
『ありがとう』
男の子は高く澄んだ声で言った。
「……へ?」
状況が飲み込めない礼太が疑問符を呟くと、男の子は首をかしげて、またニコッとした。
『僕の妹を助けてくれたでしょ』
切れ長の瞳が眇められる。
そう、どこか華女を思い出させる……つまりは奈帆子を思い出させる瞳。
「君は…………隼人くん?」
『うんっ』
元気いっぱいうなづいた彼は、いたずらっぽく笑った。
二人の意識が戻らないことを不安がる礼太に、雪政が微笑む。
「だいじょーぶ、二人とも疲れて眠ってるだけだよ。力を使いすぎたんだね。…………
こんな小さな身体に強大な魔力は負担が大きすぎる」
付け足すように囁かれた声は、礼太の耳にまで届かなかった。
二人をベッドに寝かせた後、慈薇鬼の退魔師たちは、部屋を出て行った。
「なんかあったら言え」
ぶっきらぼうな言葉に礼太がうなづくと、希皿は微かに笑った。
「華澄ちゃんと聖くんが心配だろうけど、君も眠った方がいい。自分が思ってるより、疲れてるはずだよ」
雪政の言葉にはうなづいたが、やはり眠れない。
妹と弟の顔から髪を払ってやったり、タオルケットを掛け直してやったり、何かをしていなければ落ち着かない。
しかしどうやら、雪政の言うとおりだったらしい。
いつの間にやら、聖が眠るベッドの端に顔を伏せて、うとうとしていた。
不意に頬をつつかれて、礼太はハッと顔をあげた。
見上げると、せいぜい小学校低学年くらいの男の子がにこにこと笑っている。
『ありがとう』
男の子は高く澄んだ声で言った。
「……へ?」
状況が飲み込めない礼太が疑問符を呟くと、男の子は首をかしげて、またニコッとした。
『僕の妹を助けてくれたでしょ』
切れ長の瞳が眇められる。
そう、どこか華女を思い出させる……つまりは奈帆子を思い出させる瞳。
「君は…………隼人くん?」
『うんっ』
元気いっぱいうなづいた彼は、いたずらっぽく笑った。