幻桜記妖姫奧乃伝ー花降る里で君と
旦那さんと奈帆子には、雪政がまとめて依頼の終了を知らせた。


奈帆子が生き霊になっていたことと、妖霊に取り憑かれていたことは伏せて、かつてこの山で起きた悲劇を、オブラートに包んで話した。


二人の顔に衝撃が浮かんだ。


無理もない。


じぶんたちが住んでいる場所が、かつては惨劇の舞台だったのだから。


旦那さんが哀しげにため息をついて言った。


「そんなことが……。その、殺された子どもたちのために、何か供養みたいなことをやった方が良いですかね」


雪政が微笑んだ。


「子どもたちは成仏して、今は安らぎを得ています。でも、供養を行うのは良いことだと思います。辻さんの気持ちの区切りにもなるでしょうし。あと、こちらで浄めを専門にする業者を雇いたいのですが、その時はこの屋敷をお借りしてもよろしいですか?一日で間に合う仕事ではないので」


「ええ、わかりました。……勿論です」


あとで聞いた華澄の話によると、退魔師と連携をとる業者の中には、場の浄めを専門にする人たちがいるらしい。


退魔した後もなお残る穢れを浄めるのが、彼らの仕事だ。


朝川中の時にも雇ったのかと聞くと、華澄は首を横に振った。


「あの時は、大元の妖が穢れた存在じゃなかった。むしろとても清浄だった。だから、周りにどれだけ淀んだもんが集まろうと、浄めの専門家を呼ぶほどじゃなかった。」






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