幻桜記妖姫奧乃伝ー花降る里で君と
これは褒められたのだろうか。
以前、華澄がウルトラだかハイパー鈍ちんだとか言ってからかってきたのを思い出す。
「えっと……つまり、鈍いのも才能ってこと?」
『まぁ、そういうことだ』
おかしそうに廉姫が顔をほころばせた。
『まったく、深刻な話をしているというのに、お前と向かいあっておると気が抜けて仕方がないわ』
「ごめんなさい」
『謝らんでよい。』
「本題はここからなのよ、礼太」
華女が思い出したように、ふわんと声をあげた。
身体をずらして礼太に向き合う華女に、礼太も慌てて身体を捻った。
「今までは貴方を自由に外へ出してあげられていたわ。貴方は良く封印を守っていたし奥乃姫が表に出てきたとしても大した力を発揮できるわけではなかった。
でも、昨日で事態は深刻化したの。
いつ、何時、奥乃が表れて、この世に災いを及ぼすか分からない。
もう、貴方を自由にすることは出来ない。
だから、わたしは早急に貴方に当主の座を譲ることにしました。」