幻桜記妖姫奧乃伝ー花降る里で君と
ぼぉっとしながらも、礼太は考えていた。
この一連の夢は、前世の夢なのだろうかと。
じっさいにあった出来事を、魂に刻まれた記憶を、夢の中で垣間見ていたのだろうか。
垂れ目で口達者で人を揶揄うのが好きで、優しげな人。
時に幼子で時に少年、また時には青年であるあの人。
……一度も年老いた姿は見せてくれない人。
あれこそが、礼太のかつての姿なのだろうか。
思考の淵から浮上した時、礼太は畳の上に寝ていたはずなのにいつの間にか布団の中にいることに気がついた。
誰だろうか、父さんかな。
ひたすら家族の庇護のもとにある自分が情けなくもあり、ありがたくもあった。