幻桜記妖姫奧乃伝ー花降る里で君と
裕司は三人を屋敷まで送るとそのまま帰ってしまった。
本家嫌いは本当のようだ。
玄関に入ると、母が出迎えてくれた。
「おかえりなさい、無事で何より。ごくろうさん」
いつまでもお嬢さまっぽさがぬけない母の口調がやけに優しく感じられた。
「ご飯食べられるわよ。すぐによそってあげる。」
「うん、ありがと。母さん」
聖の頭を撫で、微笑んだ母の顔が礼太の腕を見て少し曇った。
「あら、怪我したの。血がついてる」
「……うん、ちょっと。でも大したことない。」
傷のことにはあまり触れられたくなくて、無意識のうちに早口になる。
「そう。消毒しましょうか?」
「自分でするよ。救急箱とってくる。華澄たちは先にご飯食べてて。」
華澄が何か言っていたが、それを聞き取るより前に、礼太は背を向けていた。
本家嫌いは本当のようだ。
玄関に入ると、母が出迎えてくれた。
「おかえりなさい、無事で何より。ごくろうさん」
いつまでもお嬢さまっぽさがぬけない母の口調がやけに優しく感じられた。
「ご飯食べられるわよ。すぐによそってあげる。」
「うん、ありがと。母さん」
聖の頭を撫で、微笑んだ母の顔が礼太の腕を見て少し曇った。
「あら、怪我したの。血がついてる」
「……うん、ちょっと。でも大したことない。」
傷のことにはあまり触れられたくなくて、無意識のうちに早口になる。
「そう。消毒しましょうか?」
「自分でするよ。救急箱とってくる。華澄たちは先にご飯食べてて。」
華澄が何か言っていたが、それを聞き取るより前に、礼太は背を向けていた。