幻桜記妖姫奧乃伝ー花降る里で君と
降りた所は無人駅だった。


良い具合に錆びれてなんとも言えない雰囲気を醸し出している。


プラットホームの地面にはひびが入っており、隙間から雑草が元気に生えてきている。


ぽつんと置かれた青色のベンチの塗装は剥がれ、鉄柵にも穴があき、もはやその役割を果たしていない。


よくいえば情緒溢れる外観、悪く言ってしまえばちょっと不気味だった。


礼太たち以外にその駅で降りる人はおらず、乗り込む人もいないようだった。


ぷしゅーっと背後でドアが閉まり、電車があっけなく行ってしまうと、礼太は少し心細くなった。


「おかしいな、案内の人が待ってるはずなんだけど……」


同じく不安げな顔をした華澄が首をかしげた。


「外にいるんじゃないかな、ほら、ここに一人でいたくはないと思うし」


聖の言葉に兄と姉はうなづいた。


同感だ。

出口はたった一つしかないので迷う心配はなかった。


でてみると、駅の前には舗装された道があり、『たばこ』の看板がぶら下がった小さな店が向かい側にあった。


隣には民間が数軒佇んでおり、広い畑が見えた。


山に向かって電波塔が連なっているのが、やたら目立っている。


「………いないね」


車を留めるスペースが三台ぶんほどあったが、一つも埋まっていない。


「その、案内の人はどうやってここまで来るって言ってたの」


「車だそうよ。」


三人は突っ立ったまま数秒をやり過ごした。


華澄が小さくため息をつき、笑って首をすくめてみせた。


「きっと遅れてるのね」


それか忘れてる。


頭の中で華澄の言葉に一言つけたしてみる。











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