幻桜記妖姫奧乃伝ー花降る里で君と
玄関の中に入ると、その屋敷が外観以上に広々していることが分かった。
礼太は高い天井を見上げ、『わぁ』と口から勝手に感嘆の声が上がるのを我慢しなければならなかった。
「さあ、こちらへ。お茶を沸かしている間に奈帆子を呼んで来ますからね」
案内されたところはどこの家庭にもありそうな比較的こじんまりとした部屋だった。
ソファをすすめられ、三人並んで腰かけた。
心なしか両隣の二人がぎゅうぎゅうと身を寄せてくる。
「ねぇ、ちょっとこの屋敷、うちよりでかいんじゃない」
ひそひそと話しかけてくる華澄は心なしか引いているようだった。
確かに、と礼太はうなづく。
当主の居住域を除けば、と心の中で付け足した。
聖はきょろきょろとあたりを見渡すのに余念がない。
白い色調で統一されたこの部屋は、外の薄暗さが嘘のように明るかったが、壁に掛かっている絵画がなんとも言えない違和感を醸し出しているのだった。
「兄さん、あれ、何」
聖が指差した方にははっきりとした輪郭のない、色だけで表現された絵が飾ってあった。
「うーん、なんだろ、木星?」
「全然違うんだけど」
後ろから聴こえてきた不機嫌そうな声に兄弟はびくりと身体を震わせた。
おずおずと振り向けば、30代くらいとおぼしき綺麗な女の人がいる。
華澄と張るくらい気が強そうだ。
「あれ、人の顔だから。」
冷たい一瞥をくれた女性に、華澄が話しかけた。
「……辻 奈帆子さんですか」
「ええ、そうよ。あなたたちが退魔師とやら?」
奈帆子は思いっきり顔をしかめた。
「めちゃめちゃ使えなさそうね」
礼太は高い天井を見上げ、『わぁ』と口から勝手に感嘆の声が上がるのを我慢しなければならなかった。
「さあ、こちらへ。お茶を沸かしている間に奈帆子を呼んで来ますからね」
案内されたところはどこの家庭にもありそうな比較的こじんまりとした部屋だった。
ソファをすすめられ、三人並んで腰かけた。
心なしか両隣の二人がぎゅうぎゅうと身を寄せてくる。
「ねぇ、ちょっとこの屋敷、うちよりでかいんじゃない」
ひそひそと話しかけてくる華澄は心なしか引いているようだった。
確かに、と礼太はうなづく。
当主の居住域を除けば、と心の中で付け足した。
聖はきょろきょろとあたりを見渡すのに余念がない。
白い色調で統一されたこの部屋は、外の薄暗さが嘘のように明るかったが、壁に掛かっている絵画がなんとも言えない違和感を醸し出しているのだった。
「兄さん、あれ、何」
聖が指差した方にははっきりとした輪郭のない、色だけで表現された絵が飾ってあった。
「うーん、なんだろ、木星?」
「全然違うんだけど」
後ろから聴こえてきた不機嫌そうな声に兄弟はびくりと身体を震わせた。
おずおずと振り向けば、30代くらいとおぼしき綺麗な女の人がいる。
華澄と張るくらい気が強そうだ。
「あれ、人の顔だから。」
冷たい一瞥をくれた女性に、華澄が話しかけた。
「……辻 奈帆子さんですか」
「ええ、そうよ。あなたたちが退魔師とやら?」
奈帆子は思いっきり顔をしかめた。
「めちゃめちゃ使えなさそうね」