星の音 [2013]【短】
― カランカラン――…
「いらっしゃいませ」
ペコリと頭を下げたその女性客は、高校生くらいだろうか。
“女性”と言うよりも、“女の子”と表現する方がきっと正しい。
あたしよりも少しだけ背丈の低い彼女は、店内をキョロキョロと見渡した。
「あの……」
「はい」
「ここって、お客の要望に合わせた本をオススメしてくれる、って聞いたんですけど」
「えぇ。お客様が望まれた場合、そのようにさせて頂いてます」
「あの、じゃあ……元気が出る本って、ありますか?」
「フフッ、もちろんですよ。うちはそんなに広くはないけど、お客様に満足して頂ける品揃えが自慢なんです」
冗談めかして笑ったあたしに、彼女は緊張が解れたように微笑んだ。
「では、こちらに座って下さい」
「え?」
店内の端にある小さなテーブルに、彼女を案内する。
「うちでは、まずお茶を飲んで頂くんですよ」
フワリと微笑んで、温かいカフェオレを淹れた。