星の音 [2013]【短】
「フフッ、ありがとう」


「あたしの方こそ……本当にありがとうございました」


それから他愛のない話をしながら、彼女を外まで見送った。


「気をつけてね」


「はい!本当にありがとうございました!」


「こちらこそ、ご来店ありがとうございました」


彼女は胸元で紙袋を抱えながら、あどけない笑顔を見せた。


そのまま歩き出した彼女の歩調は、まるで背負っていた荷物を下ろした時のように軽やかだ。


もし、また彼女がここに来てくれる事があれば、きっともっとたくさんの笑顔が見られるだろう。


そんな事を考えながら、彼女の背中に頭を下げた。


「またのご来店をお待ちしています」


ここは、小さな本屋。


大型書店の品揃えには敵わないけど、一人一人に合った本をオススメ出来るのが自慢。


「今日はそろそろ閉めましょうか」


夕陽に染まる空に向かって呟き、明日はどんなお客様と出会えるのだろうとワクワクしていた――…。





             END.


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