あなたと私のカネアイ
「俺は結愛を愛すよ。約束もしたよね? 結愛の『お金』に囚われた心、俺に頂戴。愛で埋めてあげるから」

 ゆっくりと近づいてくる円の唇は、私の瞼を誘惑という重力でおろす。ふわりと重なった唇は温かくて柔らかくて……安心した。

 私には、お金でしか価値を図れない。自分も、愛も、お金に換算されていく。

 ――お金が欲しいならあげる

 じゃあ、その換算がなくなったときに円との関係は何になるの?
 啄むようなキスが降り続ける中、過った疑問を見透かすように円が「結愛」と私の名前を呼ぶ。その掠れた声にゾクリと肌が泡立って、自問自答していた意識が円に向く。
 やがて唇が離れて目を開けると、円はまだ近い距離で私を見つめていた。

「キス……嫌じゃない?」

 嫌じゃない。
 でも、それを口には出来なくて、私はじっと円を見つめ返した。
 円がお金持ちで、私の意地っ張りを見透かせる唯一の人なら、彼の言う運命はありかもしれない。そんな、らしくもないことを熱に浮かされた頭で考えた。
 何だろう、この感覚は初めてのものでうまく説明できない。ゆらゆら揺れているような身体は、波打つ心臓と共鳴してるせいだろうか。

「嫌じゃないなら、もっと……近くにおいで」

 円が私の身体を引き寄せて、膝の間に挟む。そのまま後頭部を抱えるようにして唇が重なった。
 押し付けるようなキス。
 挨拶みたいな今までのそれとは違う触れ方に戸惑って、咄嗟に彼の胸に手をつく。
 私の困惑に拍車をかけたのは、円の舌――唇を舐められて驚き、身体を引こうとするも、円にしっかりと抱きかかえられていてできない。

「っ、まど――ッん!」

 そのまま舌が差し込まれて、一気に口内の温度が上がった気がした。
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