あなたと私のカネアイ
「条件は、他にもあります!」

 私は円さんを睨んで言い放った。彼はさっき驚いたときと同じように少し目を大きくしたけれど、すぐに笑顔に戻る。

「そう? じゃあ、俺がそれにOK出したら……結愛ちゃん、俺と結婚するよね?」

 まるで、すでにすべての条件にYESと答えたかのような言い方。

「いいですよ」

 正直、このときの私は自棄になっていたと思う。売り言葉に買い言葉で返事をした。そんなことできるわけないって思っていたからもある。

「お金の使い道に文句を言わないこと」
「条件三と似てるね? 別に口出しするつもりはないよ」

 円さんはクスッと笑う。

「私の部屋を作ってくれること」
「今も余ってる部屋があるから使って構わない。新しく家を建てて結愛ちゃんの好みに合わせてもいいし。ああ、部屋には入るなというならそれも守る」

 家を建てるって……「コンビニ行ってくるね」くらいのトーンで言われたのは初めてだ。

「タバコを吸わないこと、家事をすること、または家事をしないなら文句を言わないこと」
「元々吸わないし、家事は今も一人暮らしだからそれなりにできるつもりだよ」

 な、なかなか手強い。

「私の趣味に口出ししないこと、一人でいる時間を邪魔しないこと!」
「もちろん。仕事もあるし、俺も自分の時間は大切にしたいと思ってる」

 面白そうにウイスキーを煽りながら、どんどん出てくるYES。
 あと……あとは!?

「私に愛を求めないこと!!」

 投げやりになって叫ぶと、円さんの動きが一瞬止まる。
 勝った?
 って、勝負をしていたわけではないんだけど。
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