あなたと私のカネアイ
 冴えてきた頭で考えるものの、思い当たる節がなくて、私は唸ったまま髪と身体を洗い終える。
 身体はさっぱりしたけど、頭の中は悶々としたままだ。
 円に部屋を見られた羞恥も抜けないし。

 ――円は、私のこと本当に好きなのかな?

 どうして好いてくれているのか。どうして私に構うのか。
 気になる。
 
 バスルームを出て、身支度を済ませて廊下に出ると、キッチンから物音がした。円が朝食を準備してくれているんだろう。
 私、本当に甘えっぱなしな気がする。
 円は私のことよく見ていて、いろんなことにおいて先回りされることが多い。朝だって低血圧な私を気遣って食事の準備から片づけまでやってくれて。
 最初こそ遠慮があったけど、それもすぐになくなって朝はゆっくりしてる。
 あれ? 私、結構初めから円に気を許してる……?
 今更そんなことを思い、ドキッとした胸に手を当てた。
 うぅ、私ってば最近変だ。
 とにかく落ち着かないと。今から朝ご飯を食べなきゃいけないんだから、冷静に、いつも通り。
 ドアの前で深呼吸をして、ノブに手をかける。

「あ、結愛。おはよう。今日は早いね」
「……っ! う、ん」

 ああ、噛んだ。恥ずかしい。
 円はいつも通りなのに、なんで私はこんなにドギマギしてるの。
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