あなたと私のカネアイ
「結愛ちゃんは愛を信じてないの?」
「信じられるのはお金だけです」

 愛なんて、そんな不透明で不安定な、この世に存在するかもわからないものを信じる方がおかしい。
 大体、愛が本当に存在するとして、そんなもので生きていけるほど世の中は甘くない。

「なるほどね」

 まぁでも、さすがに「私はあなたを愛しません」っていう女と結婚する気はないよね。良かっ――

「わかった」
「は!?」

 驚き過ぎて、ガンッ、と思い切り爪先をテーブルの脚にぶつけてしまった。

「条件はそれで最後かな? じゃあ、結婚しようか」

 ニッコリと笑った円さんは、呆然とする私の手を取って、テーブルに置きっぱなしだったブラックカードを握らせた。
 それが、私たちの婚約指輪だとでも言うように。
 これは夢か、幻か?
 ううん。ぶつけた爪先が、靴越しだったのに妙にじんじんする。
 痛い。

 これは――紛れもなく現実だ。


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