あなたと私のカネアイ
「……ッ、ま、どか」
「少しだけ」

 円の唇が離れて、耳元で囁かれる。カットソーの上から胸を包み込むように触れてくる手の動きは、優しくて……

「俺も、男だから……結愛の心が緩んでると、つけこみたくなるんだよ?」

 耳たぶに触れる唇は、さっきまでのキスのせいで濡れていていやらしく感じる。
 吐息混じりに囁かれると尚更いけないことをしているような気分になって、酸素は十分にとりこめるようになったはずなのに息が上がっていく。
 愛する奥さんと一緒の家に住んでたら、なんて忠告めいたことを言われたのはいつだったっけ。
 そう言われて警戒してたのに、いつのまにかキスをたくさんするようになってしまった。円に縋り付いて泣いて、こうやって身体に触れられて……それも、嫌だって思ってない自分の気持ちの変化に驚く。
 どうしよう。
 この気持ちは何? どうして、こんな風に変わったの?

「結愛」
「ぁ……!」

 カットソーの裾から手が入ってきて、思考が途切れる。
 ブラの淵をなぞる指先、首筋にかかる熱っぽい息……こんなの、知らない。どうしたらいいのかわからなくて目を瞑るけど、鳥肌が立ちそうで立たないようなむずむずした感覚に囚われる。
 指が胸の外側を辿って鎖骨の方へ上がってくると、肌に冷たい空気が触れた。
 目を開けるとカットソーが胸の上まで持ち上げられて、円の目の前に肌が晒されてしまっていた。
 カッと頬が熱くなる。咄嗟に隠そうと両手を動かした瞬間、胸元に円の唇が落とされる。
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