あなたと私のカネアイ
「合コン?」
「嘘。この前、合コンで会ったときに条件を全部聞いたって言ったでしょ? それが初めてじゃないなら……」

 いつだろう。
 円みたいなお金持ちと出会う機会なんてなかったはずなのに。
 クスクスと笑いながらリビングへと歩いていく円を追いかけていくけど、円は私の質問には答えないままソファに座って私を見上げた。

「世の中、お金がすべてでしょ」

 夫の口から出てきた、彼らしくない言葉に目を丸くする。
 ううん、驚いたのは、それが私の常套句だったからだ。 

「俺、一応経営者だし、たまにレストランとかカフェにも様子見に行くんだよ。一年くらい前に出した駅前のイタリアン……結愛の職場の近くだけど、わかる?」
「え! う、うん。あの人気のお店でしょ?」

 値段は少々高めだけど、若い世代でも行けないほどの敷居の高い店ではない。ランチはリーズナブルなコースもあるし、若年層向けの宴会プランもある。
 駅前で立地も良く、雰囲気の良い内装が評判で、お値段の張るディナーでも誕生日や記念日のお祝いに奮発するお客さんは多いらしい。
 私も佳織とランチしたことがある。流行に敏感な彼女に誘われたんだけど、料理が美味しかったからその後も何度か足を運んでいる場所だ。
 まさか、そこで……?

「そう。開店当時はあそこにもよく行ってたんだ。たぶん、一緒にいたのは佳織ちゃんだと思うけど……俺が結愛を見かけた日は二人で結婚の話をしてた」
「あ……」

 私の思った通り、佳織との食事のときにたまたま彼が店にいたらしい。 
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