あなたと私のカネアイ

条件×条件=結婚?

「いいじゃん。結婚しなよ」

 仕事終わりに待ち合わせて来たホテルのレストラン。向かいに座った佳織はそう言ってワインのグラスを傾けた。この前の合コンは彼女からの誘いだったので、当然、円さんと抜け出したことは知られている。
 その後のことを報告しろという催促を受けて来てみれば、有名ホテルのフレンチに連れてこられた。
 入り口で顔を引き攣らせた私に、知り合いからディナーコースの割引券をもらったから大丈夫、と佳織は笑ったけど、割り引いてもらっても、結構高いと思う……
 財布の中を思い出しながら、思い出したくないことまで浮かんで私は顔を歪めた。
 あのブラックカードは、結局私の財布の中に眠ることになった。いらないと言っても、受け取ってもらえないどころか、円さんは暗証番号まで教えてくれた。
 子供の頃飼っていた犬の命日なんだとか。
 ……命日って。まぁ、いいけど。
 連絡先も交換させられたけど、何度か届いたメールに返事をしたことも、かかってきた電話に出たこともない。留守電も聞いてない……
 これ以上関わったら本当に結婚まで持ち込まれてしまう気がしたから。
 でも、カードは返さなくちゃいけないよね……
 そうなると、少なくとももう一回会わなくちゃいけない。物が物だし、まさか人伝に返す訳にもいかないだろう。
 本当にどうしよう。
< 13 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop