あなたと私のカネアイ
 それからも、今度は何をしたいとか、どこへ行きたいとか、まだ先の私の誕生日のことまで話した。
 私の気持ちはもう円に傾いている。
 これからもずっと彼と一緒に過ごすという前提がなければ、先のことなんて話さない。

 デザートまでぺろりと平らげた私たちは、二人手を繋いで電車に乗った。
 駅から家までも、ずっと楽しく過ごして……

 残った課題は、カバンに忍ばせたプレゼント。
 円は一緒に食事ができて嬉しいと言ったけど、ほとんどお祝いのようなことをしていない。せめて、これを渡して彼の誕生日を祝いたい。

 マンションの部屋に入って、仕事着を着替えてからプレゼントを手にリビングへ向かう。
 円はソファに座ってコーヒーを飲んでいた。

「結愛も飲む?」

 私に気付いて聞いてくれた円に向って首を横に振り、彼に近づく。

「あの……円、これ……さっき、レストランでは渡すタイミングを逃しちゃって」

 おずおずとプレゼントを差出し、私は小さく「お誕生日おめでとう」ともう一度お祝いの言葉を口にした。
 円は少し驚いたように目を丸くしたけど、すぐにフッと表情を和らげて箱を受け取ってくれる。

「ありがとう。開けてもいい?」
「うん」

 私は円の隣に座り、彼がラッピングを解いていくのをドキドキしながら待つ。
 丁寧にリボンを解き、包装紙も破れないようにはがしていくのが円らしい。
 中身は……

「キーケース?」
「何がいいのか、わからなくて……いろいろ調べたんだけど、やっぱり普段使えるものがいいかなって。シンプルなデザインを選んだんだけど……」

 本革の、それなりに良いものを選んだつもりだ。素材が良いのでブランドのロゴだけが入ったシックなキーケース。これならあまり好みにも左右されないかと思ったが、気に入ってもらえるかどうかはまた別だから、ドキドキする。
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