あなたと私のカネアイ
 それからもじっくりコレクションを堪能した私たちが、お土産屋さんに入る頃にはお昼を過ぎていた。
 何度も来たことがあるはずなのに、久しぶりだったからか、それとも円と来たからか……とても新鮮な気分で、すごく楽しくて夢中になってしまったのだ。
 お腹は空いたけど、やっぱり記念のテディベアはしっかりと選びたい。カフェで休憩したときに円とプリンを半分こして食べたし、時間を掛けよう。
 意気込んでテディベアを選び始めた私の隣を、円は何も言わずに歩いている。だけど、ふと円が立ち止まって、一体のテディベアを手に取った。

「ねぇ、これにしたら?」

 私の顔の前に差し出されたクマは、ちょっとレトロな感じのぬいぐるみだ。黄色いスカーフが茶色い毛並みに映える。耳がちょっと潰れ気味なのも、可愛いかも。

「アメリカのメーカーだって。ちょっと強気な表情しているように見えない? 結愛に似てる」

 円がそんなことを言いつつクスクス笑う。

「私? 強気に……見えるの?」
「一見ね。でも、俺にはこのクマみたいに耳がしゅんってなってるのが見える。結愛はそんなに強くないね」
「――っ、私の耳はしゅんってしない!」

 慌ててそっぽを向いて、違うクマを手に取った。
 なんか、泣きそう……「強くない」なんて、言われたこと初めて。

「こっちのクマにする!」
 
 円がときどきしてるのに似ている眼鏡をかけた、クマのプリントTシャツを着たテディベアの男の子。それをギュッと抱きしめてレジへ歩き出すと、背後からまた笑い声が聞こえた。

「それ、俺に似てない? じゃあ、こっちの子は俺が買おうっと」
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