あなたと私のカネアイ
 円の手が、するりとカットソーの中に入ってくる。素肌に触れられて思わず円の肩を掴んで手の甲に額をくっつける。
 円の指先が胸に触れて、ブラの淵を辿ってすぐにホックへと向かっていく。

「んっ、や、待って!」

 少し大きな声を出せば、円はピタリと動きを止めてくれる。
 ああ、ほら……また、私のことばっかりなんだ。
 それが嬉しいって思ってしまう私は、円なら私の嫌がることはしないだろうって思ってる私は――

「待てるよ」
「まど、か……」
「結愛が嫌ならしないって決めてる。でも、結愛は意地っ張りでなかなか認めてくれないし、少し強引にしたらもしかして……って思ってる自分もいる」
「そんなこと……」

 意地っ張り――最初に宣言した言葉を、自分から取り消したくないって……だから、認めたくないっていう私のひねくれた気持ちが邪魔をしてる。
 でも、もうそれも限界だ。

「わ、たし……円、のこと……好き……かも」

 独り言のような、でも、円の目を見て呟いた言葉を聴いて、円はフッと柔らかく笑う。

「かも?」
「だ、だって……嫌、なの」

 そう言って、私は視線を落とす。
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