あなたと私のカネアイ
「不安なことがあるなら……今、言って。途中じゃ、聞く余裕ないかも」
「ぁ……」

 円が長い息を吐き出す。
 もしかして……円も緊張してる?

「結愛」
「う、うん……えっと、その」

 円は私を大切にしてくれる。嫌がることはしない。
 でも……ひとつだけ。

「あ、あの、ね…………その、こ、ゴッ……えっと、も、持って……」
「ん……ちゃんと、あるよ」

 円は眉を下げて困ったように笑うと、ベッドから降りてカバンの中からそれを取り出して持ってくる。
 枕元にそれを置くと、私の頭を撫でてくれた。

「……結愛。セックスは子供を作る行為でもあるけど……でも、俺が結愛に触れるのは気持ちを伝えるためだよ?」
「……うん」

 円は全部わかってる。

 たぶん……円は子供が欲しいんだと思う。
 そりゃ、ご両親が仲良くて“愛”されている環境で育ったら、同じように家族が欲しいって思うのかも。でも、私は――今の私は――まだ、そこまで考えられない。
 でも、円とこうして近づけたみたいに……もしかしたら、私も円と同じ気持ちになれる日がくるのかもって今は思ってる。
 それは、まだ円には言わないけど。
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