あなたと私のカネアイ
 ご飯を食べ終えた後の片付けは、円と私も手伝った。
 そろそろマンションへ帰る時間だ。
 作りすぎたとお母さんが持たせてくれた夕食の残りは、私の好物ばかり――些細なことだけど嬉しかった。お母さんが私を待っててくれたことがわかるから。

「これも、持って行って。式の日はゆっくりできないかもしれないし、荷物も多くなりそうだから」

 玄関で靴を履き、挨拶をするときにお母さんが大きめの紙袋を渡してくれる。中を覗くと、透明な袋の中にウエディングドレスとタキシードを着たクマのカップルのぬいぐるみが入っていた。

「お父さんと一緒に選んだの。写真立てもあるから、結婚式の写真を飾ってね」
「ありがとうございます」

 何も言えないままの私に代わって、円が軽く頭を下げてお礼を言う。

「結愛」
「あ……うん」

 手を繋いで呼びかけられ、ハッと顔を上げると円は優しく微笑んでいて、私は彼の手をギュッと握り直した。

「あの……ありがとう。ぬいぐるみ……大切に、する」

 これって……二人で買ってくれたんだよね? お父さん、も……?

「じゃあ……また、結婚式で」

 なんだか素っ気無くなったけど、どうしていいかわからなくて早口にそう言った。円ももう一度お礼を言って玄関のドアを開ける。
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