あなたと私のカネアイ
「結愛は?」

 本当は、ここで「好き」って言うのが普通なんだと思う。でも、素直に自分の気持ちが言葉として出てこない私は、やっぱり意地っ張りで……

「お金がなくなったら、離婚する」

 円にギュッと抱きついてそんなことを言ってしまう。
 私の可愛くない言葉に「なくならないように、頑張って働きます」なんて言っちゃう私の夫は、やっぱりちょっと変なのかもしれない。

「……怒らないの?」
「どうして? いいよ。愛情表現は人それぞれだし」

 ああ、もう、円には敵わない。私の言動をそんな風に解釈してくれる人は、きっとこの世の中でたった一人だけだ。

「お金の管理はしっかりしてもらえるみたいだし、俺は心置きなく結愛を愛せるでしょ? 愛とお金と……俺たち、兼ね合いが取れてる夫婦ってこと」

 クスクスと笑って円はまた私にキスをしてくれた。
 優しくて愛を信じる男と、意地っ張りでお金を信じる女――そんな、あなたと私のカネアイ。

「結愛……愛してる」

 キスの合間に囁かれる言葉に応えるように円の背に回した手に力を込める。
 
 ねぇ、円。
 きっと素直になるから。
 それまで……ううん、それからも、ずっと一緒にいて――…


*END*
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