あなたと私のカネアイ
 やっぱり宇宙人だ。

「あの……理由は何ですか?」

 私のことが好きなわけじゃないだろうし、円さんが私と結婚して得することもないはず。

「結愛ちゃんのことが気に入ったからに決まってるでしょ?」

 気に入った? どこを?
 そんな疑問が顔に出ていたのか、円さんはクスッと笑って続ける。

「一目惚れってやつかな」
「はぁ……? そんなことで、結婚までするんですか?」

 一目惚れで結婚していたら世の中夫婦だらけだ。

「外見はきっかけだよ。ツンツンしてる結愛ちゃんも可愛いなって思うし、気になる。なんていうか、甘やかしたいって思ってるんだよね。これって恋じゃない?」

 ぶわっと、自分でも首から上が真っ赤になっていくのがわかった。
「可愛い」なんてこんなにさらっと言う男、初めてだ。しかも、自分が恋をしていると相手本人を目の前にのたまった!

「結愛ちゃん、この前は確かに『結婚する』って言ってくれたのに、ひどいな」
「結婚するなんて――」
「でも、条件をすべて呑めたらって約束だったでしょ?」

 約束、とあれが言えるのなら……私は円さんと結婚すると宣言したことにはなる、の?
 だからって、一目惚れで結婚まで決断する? 私のこと何も知らないのに?
 頭の中はハテナマークばかり。自分でも眉間に皺がよるのがわかった。
 そんな私を見て、円さんはクスッと笑う。

「ねぇ、結愛ちゃんはお金がある人と結婚したいんでしょ? で、俺はその他の条件もクリアしてるし、結愛ちゃんが気に入ってて結婚したいと思ってる。それじゃ、ダメなの?」

 あんな条件を突きつけて、初対面でドン引きされることはあっても気に入られることなんてない……と思うけど。
 実際、目の前の男はそう言い張るのだからそういう奇特な人もいるということだろう。
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